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ショーケン逝去

 投稿者:えびよう  投稿日:2019年 3月30日(土)17時49分58秒
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  朝日新聞の記者の文です。
1番言い得ているような気がしましたので、長いですが、コピペします。
また、私たちの時代の俳優がいなくなりましたね。
残念です、早すぎます。



ショーケンが死んだ。

 マカロニが死んだときも「うそだろ?」と思った。だが、あのときほどは、じつは驚いていない。ショーケンなら、こういう消え方をするんじゃないか。そういう覚悟というか、諦めでしょうね、どこかにあったのだろう。
 ある年代以上なら、マカロニ刑事を知らない男の子はいない。人気刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の主人公で、ショーケンこと、萩原健一が演じていた。まっ白なスーツに、幅広の開襟シャツ。1970年代黒人ソウルシンガーぐらいしか似合わないような、あり得ないファッション。その主人公が、チンピラに刺され、劇中、あっけなく死んでしまう。

「うそだろ?」。テレビにかじりついていたわたしら男3人兄弟は、なにが起きたのかわからず、あっけにとられた。主人公が劇中で死ぬテレビドラマなんて、当時、ありえなかった。ショーケン本人による演出だったという。

 ショーケンがしてきたことは、「ありえない」ことの連続だった。

 67年、ザ・テンプターズでデビュー(しかも、最初はメインボーカルの代役だった)。グループサウンズ全盛時で「エメラルドの伝説」「神様お願い!」がヒット、ザ・タイガースの沢田研二と人気を二分した。しかしバンドがいやになり、自分から新聞記者にテンプターズの解散をリークする。「そうでもしなきゃ辞められなかった」と、のちに語った。ありえねえよ。

 そのあと、沢田とスーパーバンドPYGを結成する。ジュリーとショーケンのツインボーカルに、ザ・スパイダースの井上堯之(ギター)、同じく大野克夫(キーボード)、テンプターズの大口広司(ドラムズ)、タイガースの岸部一徳(ベース)。どんだけありえないメンバーなんだ。海外で言ったら、ジョン・レノンとミック・ジャガーのツインボーカルに、ジェフ・ベックのギター、スティービー・ワンダーのキーボード、キース・ムーンがドラムに座って岸部一徳がベースを弾く、みたいな。

「ジュリーで1万人、ショーケンで1万人の客を呼べる」という前評判だったが、ライブのふたを開けてみると客は200人。ショーケンとジュリーのファン同士がけんかして、ショーケンも客とけんかするという、ありえない結末で、すぐ消えた。
 音楽シーンから消えても、ショーケンのスター性が消えるわけはない。テレビでは「太陽にほえろ!」でスターダムへのきっかけをつかみ、「傷だらけの天使」で不良スターの座を揺るがぬものにした。もう言われすぎてて書かないが、「傷だらけの天使」の冒頭シーンでの、コンビーフやトマトやビスケットやソーセージを食い散らかすショーケンをまねしなかった不良は、いない。

 その後、不良の枠を飛び出し、「八つ墓村」や「影武者」など映画界で大化けしたのは、もはや多言を要さない。

 ショーケンの魅力とは何だったのか。ライバルだった沢田研二や松田優作と比べると、よく分かる。

 ファンキーなのだ。

「太陽にほえろ!」や「傷だらけの天使」のテーマ音楽(ともに、元PYGの大野克夫、井上堯之が担当)は、日本の音楽を飛び抜けたファンキーさがあった。ショーケンもそうだ。70年代黒人ソウル歌手のような、かっこいいんだかやりすぎなんだか、観ている方が混乱する、そんなかっこよさ。ジュリーみたいに、バリバリの二枚目じゃない。どこか、抜けている。抜けすぎてるから、突き抜ける。

 もうひとつ。情けないのだ。

 ショーケンがほっぽり投げた「太陽にほえろ!」の主人公の座は、当時まったく無名だった松田優作が射止めた(ジーパン刑事)。松田はその後、国民的アクションスターになった。リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」でも、存在感ありありの殺し屋を演じ、惜しまれつつ夭折した。

 松田は、これまた全身、かっこよかった。三枚目役もやっていたが、それでも「三枚目を演じているかっこいい人」の感はぬぐえなかった。ショーケンは、本気レベルでかっこ悪い、情けない男を演じられた。「傷だらけの天使」で、刑事ややくざにどつき回され、悲鳴をあげ謝っているショーケンに、演じている感は、ない。情けなさ、かっこ悪さが、かっこよかった。

 スコット監督も当初、「ブラック・レイン」にはショーケンを考えていたのだという。松田の怪演はアカデミー賞もので、長生きすればその後ハリウッドスターになっていただろう。ただ、殺し屋が刑事に捕まって以降、いただけなかった。というか、役が松田に、似合ってなかった。クールだった殺し屋が、なんか、情けないのだ。ここはやはりショーケンだったろう。
 そんなんだから、当然、女性にはもてた。多くの浮名を流したが、わたしがいちばん好きなエピソードは、女優・倍賞美津子との危ない恋だ。当時、倍賞はまだ、プロレスラーのアントニオ猪木の妻だった。あるパーティーで偶然、猪木とショーケンが鉢合わせした。周囲がひやっとするなか、ショーケンは猪木のところに進んでいき、「どーも」と頭を下げたという。猪木も思わず笑ったそうだ。

 当時の猪木は、おそらく世界で一番、けんかが強かった。あんときの猪木に「どーも」もないもんだ。ありえない。どんな心臓してるんだ。

 ショーケンは、消化管間質腫瘍という、10万人に1、2人の希少がんで、8年も病気を隠し、死の前々日までジムに通っていたのだという。ありえない。だけど、ショーケンならしょうがねえだろうな、とも思う。

 これで、永遠にお別れなんだろう。ならば、永遠にお元気で。バイロン。(朝日新聞記者・近藤康太郎)
 
 
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